古代出雲の薬草文化を未来へ
出雲国風土記の掲載植物に着目し、失われつつある薬草の知恵を日常生活に取り入れようと活動する「古代出雲薬草探究会」。代表をつとめる須田さんは、2013年に出雲市大社町に移住。体を壊したときに、身近な地の旬のものを食べることで体の調子を取り戻したことから、野草や玄米菜食の勉強を続ける中で、古代出雲の薬草文化に興味を持ち、「もっと勉強したい」と地元の女性4名で同会を立ち上げた。
古代出雲では薬草が有効に利用されていたが、現在ではその文化や伝承が失われつつある。「身近にある植物を日常で使えるようにして、親しみを持ってほしい。決して難しくないと伝えたい」。そんな思いで、出雲国風土記記載の植物をテーマに、自然の中にある植物を観察・採取したり、調理・染色などのワークショップを開いたり、季節の薬草茶会や講演会を開催したりしている。
ワークショップや講演会には県外からも多くの参加者があるという。ホームページやフェイスブックなどでタイムリーな情報を届けると共に、小冊子やパンフレットなども発行し、より多くの人に活動を知ってもらう為の媒体を増やしている。出雲の歴史や薬草文化に興味のある外国人にも対応するため、ホームページやパンフレットに英訳も併記している。
今年3月には古代出雲薬草展示室を、自身が経営するカフェに併設して開いた。植物の標本、『出雲国風土記』記載植物一覧、薬草と医薬の歴史年表などが展示されており、薬草に関する書籍や薬草茶も購入できる。展示室は、薬草に関心がある人の情報交換の場となっていて、自分達の学びを表現する場ともなっている。
最近は薬草の商品開発の相談も県内外から増えてきているという。出雲の婦人会からは、「薬草の効能や意味などを勉強したい」との問い合わせもあるそうだ。
須田さんの夢は、「古代出雲歴史博物館で古代出雲の薬草文化をとりあげるコーナーができるくらいに、身近になってもらえる」こと。「薬とは、草を楽しむと書くんですよ」と最後に須田さんは教えてくれた。楽しみつつ古代出雲の薬草文化を伝える須田さんの活動は今後も続いていく。
(Y)