自然と共にある暮らしをつなぐ生き方
奥出雲町中村地区にある「囲炉裏サロン・田樂荘(だらくそう)」
建物の周りには木々が鬱蒼と生い茂り、入口には映画「となりのトトロ」を思わせる木のトンネルがある。そこを抜けると築300年超の古民家が現れる。
家主の白山さんご夫妻は、古民家を「できるだけ昔のまま」の状態で残し、一年中囲炉裏に火をくべ煮炊きをし、自然農法で米作りなどを行い生活。民泊や農業体験という形で、県内外から訪れる人の受け入れも行っている。
千葉県出身の洋光さんは、仕事で食と向き合う中で、「安全・安心で作り手の見える作物を食べてもらいたい=自分で栽培したものを食べてもらいたい」と考えるようになり、自然農法や有機農法の勉強を始めるようになったという。
水と空気が良いところをさがし2005年に千葉県から島根県(松江市)へ移住。その後2012年に現在の奥出雲町に移り住んだ。
その地域ならではの衣食住を実践し、みんなに知って欲しいという思いがあったが、移住する際に白山さんが注意したことは「ゆっくりとあせらず、周囲の方々に理解してもらう」ことだった。
まずは、「地域にお邪魔させてもらっている」という気持ちを持ち、人となりを見てもらい仲間として受け入れてもらうことを重要視した。
その中で自然農法、有機農法で旧来の農家の生活に近い暮らしをし、民泊のお客さんと一緒に農業を行い、収穫したものを中心にいただく暮らしを実践。その様子や、民泊のお客さんが生き生きとした表情で話す体験内容を、地域のみなさんが見聞きすることで、白山さんへの理解が深まり、民泊のお客さんに積極的に話しかけてくれたり、野菜や手料理の差し入れをしていただくなど、支えてもらっている。
民泊のお客さんの多くは移住を考えており、移住先の候補として奥出雲町を検討している。自然環境だけでなく、白山さんと地域の皆さんとの関係を見て奥出雲町への移住を決断される方も多いという。また、すぐに移住できなくても、農繁期に手伝いに来てくれる方も多く、彼らが奥出雲の魅力・田樂荘の魅力を各地へ発信してくれている。
田樂荘では民泊利用者へ「いらっしゃいませ、ありがとうございました」ではなく「お帰りなさい、いってらっしゃい」と声掛けをする。利用者も「ただいま」と帰ってくる。 ふるさと(奥出雲)の実家(田樂荘)へ帰る。単なる観光・交流ではなく、第二のふるさとづくりが行われている。
(M)