島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

絶やさない「さんべの灯」

「100年先の三瓶に子供達の笑い声を」をテーマに、三瓶山西の原で「山の駅さんべ」を運営し、食を中心に三瓶のワクワクを発信している株式会社necco。2015年に設立し今年5年目を迎えた法人だ。創業メンバーでもある梶谷さんは、今年8月に2代目の代表に就任した。

大田市三瓶町出身の梶谷さんは高校生の頃、大田市での暮らしに閉塞感を持っていた。大田高校卒業後は島根を出たいという一心で上京。大学在学中から歌の仕事をはじめた。結婚後はフリーランスとなり、3人の子供にも恵まれ、子育て、時々声の仕事という何不自由ない暮らしをしていたが転機がおこる。2011年3月11日の東日本大震災だ。この震災と原発事故が東京での暮らし、子育てを改めて考えるきっかけとなった。東京で会社を営む夫を残し、子供達を連れて大田市三瓶町へUターンした梶谷さん。以後8年、島根生活がメインの2拠点暮らしを続けている。

移住して間もなく、幼馴染に誘われ軽い気持ちで入ったのが、三瓶の農業や食に関心を寄せる女性グループ「さんべ女子会」、neccoの前身となるグループだった。会では、三瓶山に畑を借り、おばあちゃん世代から畑仕事を学ぶ等順調な活動をしていたが、さんべ女子会にも大きな転機が。西の原レストハウス(現:山の駅さんべ)に、指定管理者の不在で閉鎖という話があがった。「レストハウスは西の原に1軒しかなく、三瓶山観光の入り口でもある。子供の頃から馴染みのある建物の灯を消したくない」と、さんべ女子会有志で法人化を決め、役員も株主も全て女子会有志の(株)neccoを設立。2015年、西の原レストハウスの指定管理者となり同年4月にオープンした。

三瓶産の食材を中心に提供するため、地域の酪農家や農家と交渉し、三瓶放牧牛のメニューや生乳を使ったアイス等を提供できる店としてスタートした。しかし、営業を始めてみると、レストハウス=休憩所であるが、「レストラン」と間違われることが多く、食事以外の方が入りづらいという声があがった。2年ほど営業した頃「道の駅のように誰もが立ち寄れる場所にしては」というスタッフの提案から「山の駅さんべ」と改名。地域おこし協力隊メンバーと図書スペースをオープンさせたり、原っぱ遊びグッズを充実させるなど、休憩所の要素も充実させ、最近では集う場として山の駅を利用する方も増えてきた。交流会をしたいという希望があれば、夜はビュッフェ営業をすることも。さらには、地域の方から祭り用のオードブルやお弁当等の注文、地元の小学校からは給食のない日にケータリングの注文が入るようになった。

「日々同じことのない1000本ノックのような日々ですが楽しいです」と嬉しそうに語る梶谷さん。来年2月で設立から丸5年。neccoの活動は様々な層の方に受け入れられてきたようだ。「今後も三瓶の楽しみ方を発信したい。すでに三瓶は面白い場所。地域の人とも一緒に、三瓶に人がいる風景を当たり前にできるよう盛り上げたいですね」と梶谷さんの表情は明るい。neccoによる三瓶のワクワクづくりはますます加速しそうだ。

(M)