島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

いきいき働ける場所を目指して

出雲市湖陵町三部に廃校(幼稚園)を利用した就労支援B型事業所施設「ワークケアはつらつセンター」がある。運営はNPO法人河南はつらつセンター。専務理事である安達征夫さんは、ここで施設長も兼任している。

現在この作業所では10名のスタッフと26名の通所者(登録者)がおり、箱の製造・梱包・組立や、収穫した西浜いもの選別・出荷等の作業を行う。旬の野菜づくり、米づくりなど農業にも力を注いでいる。

ここでは、スタッフの温かいサポートのもと、障害者同士が共に考え、朝礼や掃除当番の日常活動も自分達で決めるスタイルだ。安達さんは「互いが同じ目線で物が言えるようになる」環境を目指している。

最初は、ほとんどの通所者が、表情も暗く、とまどう様子をみせるという。そこでまず安達さんがするのは、心にあるものを探るために一人一人の話を聞く事だ。根気強く続けていくうちに、受け入れられていると感じた通所者は自分から仕事に関わろうとする。通常半年ぐらいで家族も驚く程、表情が豊かになり、態度も次第に変化していく。

しかし残念な事に、施設内では笑顔で過ごせるようになっても、家庭に戻ると態度が一変し、不安定な行動をとる通所者もいたという。問題解決に向けて、安達さんは通所者の家族とも何度も時間を割いて懇談を重ねている。家庭内の環境を整えることも通所者が社会的に自立する上で重要な要素なのだ。

スタッフの地道な努力で、受入れ環境を整えた後は、通所者同士が互いに刺激や影響を受け合うことで、責任感や自信を持てるようにサポートしている。

通所者の一人で障害を持つ20歳の女性が2017アビリンピック(障害者技能競技大会)島根大会で金メダルを取り、全国大会に出場した。心に傷を負い、今まで何にも自信を持つことのできなかった彼女に「得意なものを何か一つ見つけて一生懸命覚える」よう勧めたのがきっかけだ。スピードと正確性が試される「製品パッキング部門」で高評価を得たことは、日々練習を重ね意欲的に取組んだ本人の大きな自信に繋がった。周りも“自分も出たい”と高揚し、現実的な目標と夢を持つようになったという。

一方、NPO法人河南はつらつセンターでは現在60名の会員が地域のニーズにこたえる為に働いている。様々な専門技術を持つ会員と通所者がコラボすることで、段階的に技術を学べる機会を作っており、これは確実に通所者の工賃UPに影響している。会員は年々高齢化しているが、技術を伝承し向上させる事で、将来の新たな会員を育てる事にもなっているようだ。

最近は、こうした取組みが評価され、以前と比較すると品物の受注ロットは桁違いに増え、信頼度も上がってきた。安達さんの狙い通りの良い循環が生まれ、これまでに一般就労者を10人生み出すことに成功している。将来的には野菜の加工場や農家レストランなど関連事業を起こす計画がある。

若い人が地元に残り、高齢者のメンバーと共にいきいきと働ける場所を作る事、これが安達さんの願いなのだ。

(T)