島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

次世代に繋げていきたい“思い”

宍道湖と日本海を結ぶ中海に浮かぶ大根島。ここに、戦後の日本を代表する東洋思想の権威、故中村元博士を顕彰する記念館がある。2012年10月10日に開館してから、今年で7年目を迎える。

この中村元記念館設立をきっかけに発足したのが特定非営利活動法人中村元記念館東洋思想文化研究所であり、そこで理事長を務めるのが清水谷さんだ。

清水谷さんは、これまでを振り返り「最初は珍しさから、市民や観光客にも興味を持たれたが、“継続する”ことが難しい。今後の課題は時代に合った館の在り方(運営)だ」と話す。

館の認知度もまだまだ低く、特別な場所として敷居が高いと思われがちだ。しかし「今の気忙しい時代にこそ、自分をみつめる心の学びの時間が必要ではないだろうか。」そう考える人達に是非、利用してもらいたい。と清水谷さん。もっと一般の人たちに気軽に来てもらえるようにしたいと、新しい利用者を増やすべく取り組みも熱心に行っている。

その一つが「中村元思想文化カフェ」の開催だ。研究員による身近なテーマでの公開講座は、定員を超えて集まることもあるという。また、地域の人々にも利用していただけるように、八束学園の子供たちに職場体験の場を提供したり、「読み聞かせ」のイベント協力なども行っている。

「入館料は無料なので、何度でも訪れてほしい」と、清水谷さんは話す。

館にある蔵書の整理は松江市からの委託事業だが、その他の運営は、支援者による貴重な寄付で賄われている。日本には「寄付すれば一言御礼がもらえるのが当然」という御礼の文化がある。「見える関係性」で寄付者にお礼が言える事は非常に大切だと考える清水谷さん。今後は寄付者にもメリットのある、「認定NPO法人」への移行を視野に入れ、準備を進めている。

また現在は、しまね社会貢献基金の登録団体として、職員一丸となって、寄付者の理解を得るには、まず自分達が制度をよく理解し、説明できるようにすることだと意識を高めている。

自身も清水寺の貫主として、多くの人と関わりを持つ中で「人のお世話をすると、まわりまわって返ってくる」と日々実感しているという。

どううまく後継者にバトンタッチしていくか、という大きな課題はあるが、清水谷さんは、できるだけ長く継続していくために、支援者の心をつかむ組織運営が大事だと意識している。支援の輪が広がって、この先も館が残り、大切な教えが次世代へと繋がっていく事。これこそが団体の目指すところなのだ。

(T)