「人生ゲーム」の舞台は商店街!
“まちを元気に” 願い込め
シャッターが閉まっていることが多く、人通りの少ない地元商店街に人の流れを生み出し、個店の魅力を知ってもらいたい──そんな思いから、商店街をボードゲーム「人生ゲーム」の舞台に見立て、各個店をめぐりながら商品に関するクイズや交流を楽しむ「まちあそび人生ゲーム」。その普及を目的に発足したNPO法人の理事長として、日々東奔西走する。
始まりは、商工関連の会で聞いた知人のつぶやき。「過去、商店街活性化の事業として様々なイベントが企画されたが、その間、各個店は店を閉め、終わってみると個店への来客数が増えることはなく、一過性の賑わいで終わっている」という話を聞いたことだった。これを受け、それぞれの個店へしっかり人を導ける活性化策はないか頭をひねり、商店街で展開するリアル版「人生ゲーム」の構想が生まれた。
そのアイディアを形にするためには、商店街関係者への度重なる説明、合意の形成、「人生ゲーム」の製造元であるタカラトミーの公認の取り付けと、いくつもの山があったが、様々な人脈も手繰り寄せながら、粘り強く事業の土台を構築。これまでに平田や大社の商店街等で計20回以上の「まちあそび人生ゲーム」を開催し、1回あたり数百人規模から数千人規模という来場者を生んだ。
この取り組みを進める中で、ゲームをきっかけに来店した店への関心や購買機会が創出されたのをはじめ、最初は「イベントには付き合うけど、うちにあまりメリットはない」と話していた古美術店主が、回数を重ねるうちにワゴン市を自ら企画したり、自宅にあるものを鑑定する「鑑定券」を新たに作成する等、商店街関係者のマインド自体を変えていったという。出雲市内の高校生も一部企画段階から参画する等、若い世代も巻き込んだ動きとなっている。
現在は、他県へもこのノウハウを伝える講演やイベント支援を手掛け、毎年県外から視察が入るようになった。商店街のみならず、福祉や防災の行事への応用も検討される等、活用の裾野も拡大しつつある。
今後は、さらなる事業の継続を図る上で、スポンサー企業の模索や参加費のあり方などを含め、収入の柱を増強するという課題に向き合っていく。支援の体制も、できるだけ商店街の自発性を引き出せるよう、手を引くべきところは引き、適度な距離感を保てるよう配慮したいと話す。「誰かがやってくれる、では意味がない。まちのことを知っているのは、まちの人。自分たちで考えてもらうことに、意義がある」と考えるからだ。
陥りがちな「イベントありき」の本末転倒を防ぎ、地域づくりの基本へ常に立ち返りながら、次の挑戦に向けたステップを歩み出している。
(K)