島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

大根島の魅力を再開発

大根島(松江市八束町)は、全国一のボタンの生産地であり、シーズンを迎える4~5月には、全国から多くの観光客が訪れる。そんな大根島で生まれ育った柏木さん。仕事に精を出す日々を過ごしていたが、ある日ふと自分の家の畑に目をやると、そこにはボタンの華やかさとはほど遠い荒れ果てた土地が映った。島のメイン道路沿いにありながら、とても観光地にふさわしいとは言えない景色。意識して辺りを見渡すと、あちらこちらにある耕作放棄地に気が付いた。「大根島は荒れ放題」そんな危機感が美しい大根島復活を目指す活動のきっかけとなったという。

実働となると、広い耕作放棄地を相手に1人動いただけでは進まない。そこで周囲に声をかけ、開墾し畑を作り、できた作物を販売するというサイクルを作り出すことから活動をスタートさせた。

しかし、意欲はあっても活動の継続に不可欠なのが収入の確保。また、作物を大規模生産し、耕作放棄地を開墾する上で、地域内の協力体制や情報共有も課題となった。それでも、柏木さんの「今できることできないこと」の判断力と決断力が、会の活動を力強く後押しした。

収入面は、地元産品に着目。みつ芋アイスや焼酎など地元で収穫できる野菜を使った商品開発、赤貝など中海の恵みを使った加工品の製造・販売によって、旬に限らず一年を通して安定した収入が得られるように工夫した。

加えて、柏木さんたちの常に先を目指す姿勢は、周囲の人たちをポジティブにした。こうした取組が、地元の団体や企業、小売店等とのつながりや、お互いの活動支援・協力体制を構築するきっかけとなり、活動の周囲には、いつしか支えあいの輪ができていた。

的確な判断や決断は、時間や費用のロスを減らすだけでなく、作業委託や商品流通、人材交流等において強固なネットワーク形成ができる要因かもしれない。

今では、複数の団体に所属し大根島の活性化に向けて様々な取組をしている柏木さん。今度は株式会社を立ち上げ、観光の側面から島の魅力を多くの人に伝えたいと考えている。これは最終ゴールではなく、あくまでも前に進むためのステップ。今、自分たちが活動できているのは、60代以上の退職した世代に頼り、甘えることができているからだという。だからこそ、地元の企業として地元住民が働ける環境をつくり、自立を目指している。

柏木さんが信念とするのは「仕事は楽しむこと」。その原動力は、一歩一歩進み、目標に到達した時の達成感。「だからこそ、どんな仕事でもできる」「どうせ働くなら楽しい方がいい」と笑顔で語る。「この島が、住む人、訪れる人にとって魅力溢れる居場所となるように頑張りたい」その表情からは、島への愛が伝わってくる。

“We Love Daikonshima!”柏木さんの熱い想いは多くの人の共感を得て美しい花を咲かせるだろう。

(T)