島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

里山で子どもの健全育成!

江津市中心部より車で15分、小学校、中学校もなくなった人口約400人の跡市地区に、里山子ども園わたぼうしが今年4月に生まれた。

最近では『森のようちえん』という言葉を耳にする機会も増えてきたが、わたぼうしもその一つである。森のようちえん活動とは、森をはじめとした自然環境を活かし、その中で保育や活動をすることによって、人として生きていく力(人間力)を育むもの。現在0歳から6歳まで14名がわたぼうしに通ってくる。午前中は雨の日も風の日も子ども達は里山に活動に出かける。

盆子原さんは地元の高校を卒業後、一度は就職のため県外へ。その後子どもの頃からの夢を思い出し、改めて保育の道を目指すことになる。専門学校卒業後は地元の子ども園に就職。そこで保育に取り組む中で『森のようちえん』という自然を活かした教育方法を知った。自分の住むこの地区には自然も多く、チャレンジしたい気持ちが芽生え、友人とともに荒れた里山を整備し、子ども達が遊べるルートを作った。

まずは単発イベントとして『森のようちえん』を実施。予想外に反響が大きく、その後毎月1回の実施を5、6年続ける中で、毎日この活動を続けていくことを考えるようになっていった。そんなときに江津市が実施している「ビジネスプランコンテスト」を知る。これが大きな転機となり、その後の展開が加速し始める。

跡市地区の保育園の廃園危機を知り、この地域に子どもが集う場所を残したいという思いも重なり、団体を立ち上げ、この子ども園が後を引き受けた。「まだ活動は始まったばかり。周囲の支えがなければ今に至れなかった。地元の協力があってこそ」。地域の全面的な協力も自分の力になった。

4月から始まったばかりだが、毎日の活動で子ども達はすっかり逞しく成長し、親子参観日(わたぼうしでは山に感謝する、山を感じるという意味を込めて「山感日」と呼ぶ)では、親御さんの方が先に疲れてしまう結果になってしまったことも。

子ども達の自主性を尊重し、毎日の活動はその日の夕方の会で、全員が1日を振り返り発表する。スタッフ達も感心するほど上手に振り返りができるようになった。そして翌日の活動ルートを子ども達全員で決める。保育園は預けられる場所だけではなく学びの場でもあることを実現したかった。

子どもは鏡、その姿こそが自分自身を映し出しており、成長していく様子を見守ることは大きなやりがいを感じる仕事である。「わたぼうしにくるのが楽しい」と言ってくれて本当に嬉しかった。この活動により多くの子が通園を楽しみにしてくれることを願っている。

子ども達の元気な声が里山にひびくこの土地で「子育てに前向きな地区となり町全体で子供を育てる環境づくりを目指していきたい」というのが今の大きな目標である。

(S)