島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

地域の米を使い、商品開発と「人育て」!

まいもん工房がある東比田は、安来市広瀬町の山あいにあり、人口319人、65才以上は53.9%を占める。標高が300~400m、水が綺麗で、昼夜の寒暖差も大きい為、美味しい米ができる。同工房は、地域でとれる米を買い上げて農地維持に取り組むと共に、その米粉を使い、米麺の製造、販売を行っている。

まいもんとは、「美味しいもの」という意味。同工房の代表を務めるのが、中村一人さんだ。大学まで関西で過ごし、名古屋で6年営業の仕事をしていた。平成10年、28才の時に島根県へIターンし、無農薬・有機にこだわる農業を始めた。

自然の枠組みの中で古来よりつくられ、身近でとれる米を美味しく食べるのが1番と、東比田でとれる米を使って、何か新しく美味しいものを作ろうと考えた。

中村さんによると、一般に、米麺に適しているとされる米は、アミロースが多く含まれているインディカ米だが、パサパサしていて日本人の舌には合わない。米麺と言っても小麦粉が混ぜられたものもあるが、美味しい米100%で米粉を作りたいと、東比田産の米にこだわった。試作の段階では失敗の連続だった。混ぜる水が多すぎると麺がくっついてしまうし、水が少ないと麺が切れてしまう。中村さんはあきらめず、自分が出来る事を考え続けた。そうして、湿度や水分に注意を払って、蒸気をあてながら麺を練る方法を見つけ、もっちりとした食感の米麺が出来あがった。

ただ、米麺は一般に知られた商品では無い為、消費者にイメージがわきにくい。そこで、営業の経験を活かし、実演販売やイベント出店の際に、お客さんに商品の食べ方や特徴を丁寧に説明して、コツコツと商品のファンを増やしている。

中村さんは、農作業、米麺事業の経営、営業、経理等を担当していて、体がいくつあっても足りない状態だ。地域の人に製麺加工を担当してもらい、イベント出店時には応援も頼む。今後、団体が成長し次につなげていく為に、そして、米麺が商品として長く残っていく為に、地域の人を巻きこんで成長してもらう「人育て」が急務だ。

同工房では、昨年から地域の若者と一緒に活動を始めている。実演販売、米麺の袋詰め、商談会への参加など、一通りの作業を覚えてもらっている最中だ。中村さんがIターンした時には小学生だった若者が、同工房の活動を知り、「面白そう」と訪ねてきたそうだ。

中村さんは、「仕事をこなすのが仕事じゃなくて、仕事をつくるのが仕事だ」と、米麺を通じた製造・加工・販売と一貫した取り組みをコツコツと行うことで、地域の若者の雇用を増やしていきたいという。「目標に対して、自分自身が何をすべきかを考える事が大事」。中村さんは、今、「人育て」という新たなチャレンジに挑んでいる。

(Y)