奥出雲町の可能性を感じる体験を・・・
仁多郡奥出雲町に拠点を置くNPO法人ただもは、平成29年3月に設立された。平仮名の「ただも」とは地元の方言で「いつも」などを意味する、大阪弁の「毎度」「もうかりまっか?」に近く、地元のおじいさん達の挨拶として使われている言葉である。地元の人に馴染んでもらい、一緒に地域を盛り上げたいという想いから命名した。
ここで理事長を務めるのが、大塚一貴さんだ。大塚さんは東京でゲームを作る仕事をしていたが、東日本大震災をきっかけに家族でIターンをした。ゲームのように、世界共通で繋がる可能性のある分野として「食」に目を向け、自ら農作物を作ろうと、奥出雲町に移住したのだ。今では、農業の世界にゲームの考え方を持ち込む事で、面白く新しいものを次々に生みだしている。NPO活動においても、その気持ちは変わらない。
奥出雲町は、高校、大学、就職における若者の人口流出が大きく目立っている。大塚さんは子供の頃から地元“好き”の熱量を上げるような体験や気付きの場を与える事こそが奥出雲町の将来に繋がると考えている。
「ゲーム業界で0から1を創るのはまさにレジェンド級、1から10を創るのはエース級。10から100を創るのは比較的簡単で誰でもできる」と大塚さん。「奥出雲町には、ここにしかない魅力や可能性、まさに『1』がいっぱい。その『1』を見つけ出し、『10』にしていくエースを育てたい」。
そこで力を入れているのが子供たちへの起業教育「JPX起業体験塾」の開催である。奥出雲町の可能性と弱みを分析し、商売を考える事で、自分たちの地元にはどんな資源や環境、企業があるのか、改めて向き合うことになる。お金に係る体験は、ただ物を作って売るだけでない。自分達や地域の“おばあちゃん”といった、人も商材になりえるのだと気付く。柔軟な思考を身に着けていけば、奥出雲町に可能性を感じる子供が増えていくのではと大塚さんは期待している。
決して商売のやり方を教え、起業を推奨しているわけではない。目指すは、奥出雲町の1を10にするエース級を沢山育て増やしていく事。それには一緒に気付きを与え、サポートしてくれる地元住民の関わりも必要だ。
これまで中学生を対象に2回実施。新聞等でも取り上げられ、参加者だけでなく学校、地域、企業側からも一定の評価を得る事ができた。今後の目標は、イベントで終わらせず、年間シリーズとして定期的に展開していく事。小学生や高校生にむけての講座も検討中だ。最終的には生徒が考えた商品を販売し、販路開拓ができれば、子供たちが町外へ出ても地域や企業と繋がり、面白くなっていくだろう。
大塚さんは、奥出雲町の子供たちが、将来にわたって地元に愛着を抱き「奥出雲町には魅力がある」と感じられるような“体験“を今後も企画していく。
(T)