ふるさとに貢献する若者を育てる
江津市の人口減少に危機感を抱き、“故郷に貢献する若者を育てたい” “新たな外部人材に来てほしい”、そんな声から「NPO法人てごねっと石見」は設立された。外部人材の誘致や支援のほか、ビジネスプランコンテスト(以下、ビジコン)の開催、ふるさとキャリア教育や中心市街地の活性化など、活動は多岐にわたる。
理事長の横田学さんは就任して7年を迎える。「地域課題は隠さずオープンに」「ビジネスプランは実行しないと意味がない」を設立時にモットーとして掲げた。設立した法人にはビジコン受賞者を雇い入れた。それはビジネスプランを実行するだけでなく、「学びの場」として経験を積み成長してもらうため。また活動しやすい場の提供だけでなく、ビジネスプランが絵に描いた餅にならないようにしたかったからだ。
現場支援には若手スタッフを配置した。狙いは若者同士が支援しサポートを受けることで共に成長し合うこと。スタッフの「考える力」を養うため、年齢の高い役員には「説教はNG」とした。本当に困ったときに道筋を立てる手伝いをすることが「年配者の役割」と横田さんは言う。その結果、若者同士が支援し合うコミュニティが形成され、県内外に向けたネットワークができるまでに至った。今ではビジコン応募者の口コミで移住する人、個の繋がりから組織の繋がりに発展するなど、地域や組織に変化が生まれている。
知名度がなく取り合ってもらえなかった設立時と比べ、今では若者の挑戦を素直に受け止め応援する土壌もできた。事業遂行に併せ、「組織」という決められたルールの中で自由な発想と考える力を磨くという“人材育成”を進めていった成果ではないだろうか。
スタッフには県外出身者もいる。就職した当時は右も左もわからなかったが、今では視察のコーディネートができるまでに成長した。組織の中で成長し江津で夢を叶えて欲しいが、経験を活かし自身の故郷にも貢献してほしい。そんな葛藤もあるという。
現在は新たな風を起こそうと組織の世代交代を図り、役員・スタッフの半数が若手となった。そして与えられた課題は自主財源を生み出す仕組みづくり。その手始めに移転した法人事務所「52(ごうつ)ビルヂング」にチャレンジショップや貸し会議室を設けた。また、市民一人ひとりの経験や知識を活かし合う市民大学も立ち上げた。ただ収入を得るだけでなく人材育成も兼ねた新事業だ。
“故郷に貢献する若者を育てたい”。設立時に掲げた思いそのままに、スタッフの考える力と新しい知恵を生かし、あくまでもサポート役に徹することを今後も続けていく。
(K)