常にチャレンジする
全国的に人口減少問題が叫ばれ、各地域で様々なUIターン事業が取り組まれている中、益田市では官民一体となったUIターン者交流会が行われている。初開催となった昨年度、実行委員長として尽力したのが野村さん(㈱石見造園 代表取締役)だった。
野村さんが生まれ育った美都町は益田市内から車で約20分の山間部に位置する。根っからの地元っ子だったが、将来起業したいという思いを胸に秘め、修行のために1度県外に出たという。宣言通り、25歳の時に地元に戻って起業すると、2015年には今の会社を設立して事業を行ってきた。
主に造園関係を手掛ける会社で、一見するとUIターン交流会とは無縁のように思えるが、29歳の時、益田青年会議所に入会したことが大きな転機となった。「益田青年会議所に入会していなければ今の自分はない」と断言するほど、交流や人脈が一気に広がり深まったことや、同世代のメンバーと作り上げる組織活動が、心に大きな変化をもたらしたという。
青年会議所での活動を行っていく中で、ある日益田市から声がかかった。官民一緒に作り上げる新たなUIターン交流会を考えているということで、突然の依頼に最初は戸惑ったものの「なんとかなるだろう」という思いはあったという。それは、これまでの経験が大きかった。現在の会社は、野村さん自らが直接声をかけ採用してきた社員がほとんどで、一緒に働いてみたいと思うからこそ社員は集まっている。日頃からボトムアップを心がけ社員の立場になって考える姿勢で、積極的に取り入れ新しいことにも取り組んだ。社員の意見をできるだけ聞き、社内に受け入れられやすい空気を作る努力をしている。会社、青年会議所、これまでの動きが新たなチャレンジの後押しとなったのだ。
第1回の実行委員長を引き受けると、野村さんの同世代のメンバーも数多く集まってくれた。周囲の協力もあって、100名以上が参加した交流会は大盛況に終わった。自分たちが思っていた以上の成功をおさめ今後につなげていく大きな手応えも感じたという。
「今後も地域から必要とされる存在でありたい。」とずっと思っている。だからこそこの地で起業した。これまで地域に育ててもらった分、今度は自分たちが恩返しをしないといけない。そう想ってここまできた。今はしっかりと自社の力をつけていってこそ、いつかは地域貢献ができると考えている。「自分がこのまちに対して何ができているのか分からない。」と野村さんは言う。しかし努力を惜しまないその姿勢を見つめ続けている人たちがいる。周囲の期待を背負いながら、そう遠くない未来に目指す何かが見つかる予感がする。
(S)