三瓶山の麓で地域にねざした活動をマルチに展開
大田市と飯南町にまたがる三瓶山の麓。そこに、マルチに活動を展開する西嶋さんの拠点がある。
現在、大田市の地域おこし協力隊として活動する西嶋さんは、もともと民俗学の研究者。全国各地の「お祭り」の調査研究に携わる中で、調査して終わるのではなく、後継者が減少し廃れつつある農山村地域に自らの身を置き、これからの展開を見届けたいとの想いを抱くようになっていった。
そんな折、島根県とのご縁をつないだのは高校時代からの友人だった。友人が県内高校の魅力化コーディネーターに就任。活動の様子を聞くうちに、フィールドで活動できる仕事に魅力を感じ、協力隊に応募したという。
今の活動の核となっているのは、大田市が取り組む「山村留学」。自然豊かな農山漁村に、小・中学生が1年単位で移り住み、地元の学校に通いながら様々な体験を積む活動である。西嶋さんが働く大田市山村留学センター(以下、「センター」)は、三瓶山の麓で平成8年にスタートした県内唯一の全国山村留学加盟施設で、小学3年生~中学3年生を対象に、都会から延べ200名近くの子どもを受け入れてきた。現在も、7名の子どもたちが寝食を共にし、北三瓶の小・中学校に通っている。
課題解決能力や忍耐力など、生きる力を高めてくれる山村留学。この魅力を伝えたいと、特に力を入れているのが情報発信だ。全国各地に足を運び、調査してきた民俗学の研究者ならではの視点を活かして、地域や人にスポットライトを当てることを心がけている。フェイスブックなどで発信する情報は、生き生きと成長する子どもたちの暮らしぶりを伝えており、親御さんからも好評だ。今では、全国の山村留学の中でも最多の「いいね」を獲得しているという。教育魅力化コーディネーターとしても、進路に県内高校への「しまね留学」の選択肢を提案することで、島根に魅力を感じる子どもたちの力になってきた。
センターでの活動の傍ら、独自の視点とスキルを活かして、ライター、チラシ・WEB制作の分野で起業。浜田市がUIターン者対象に刊行した冊子の取材・編集なども手掛けている。
しかし、西嶋さんのマルチな活動はこれだけに留まらない。県内の地域おこし協力隊員や、そのOB・OGとともに設立した「しまね協力隊ネットワーク」の法人化に携わるほか、奥様とともに平成29年9月に三瓶西の原にある山の駅さんべで「はらっぱ図書室」をオープン。また、震災に見舞われた温泉街を盛り上げようと、昨年の12月に志学にある三瓶温泉の一角に「ぽかぽか図書室」を開設した。情報発信以外にも、自らが地域で感じた課題意識や夢を精力的に具現化している。
協力隊任期終了後も、引き続きセンターで教育魅力化コーディネーターとして従事することになっている。
これからの地域は、西嶋さんの目にどのように映っていくのか。素敵な未来像であることを期待するばかりだ。
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