島根で頑張る人

『島根で頑張る人』は県内で活動する人にスポットを当て、考え方や経験から活動に迫るコーナーです。スタッフの「学び」も兼ねて取材させていただいています。

しまねで頑張る人イメージ

お米の産地を盛り上げる!
「うやま米」でつながる地域と若者

宍道湖から中海へ汽水を運ぶ大橋川。その南北をつなぐ新大橋のたもとに藤本米穀店はある。

明治26年の創業以来、地元のお米を中心に商いを続け、厳選したこだわりの米を取り扱う。「出来るだけ自分で産地を訪ね、生産者さんと会って話をすることを大切にしています」と5代目の藤本真由さんは言う。東西に長く、島や海・山も多い島根県の米を知るには、実際に現地へ赴き、生産地の特性を知り、直接話をしなければ、いい米を見極めることはできない。そんな思いから、高品質の米を求め、県内の米農家を訪問していく中で、宇山地区で奮闘する人々と出会った。

雲南市から「米の輸出に取り組みたい」と相談があり、現地へ赴いたことが始まりだった。標高約500m、大雪が降り雪解け水が田んぼを潤す。寒暖差があり、水、空気がきれい。さらに島根米の種もみ栽培の管理能力を有する。こんなに米作りに最適な土地があるのかと驚き、すぐに宇山地区に惚れ込んだ。翌年には台湾でフェアを行い、この盛り上がりを機に「うやま米」をブランド化し、国内でも販売を行った。これが多くのメディアに取り上げられ、宇山地区は注目を集めるようになったという。生産地にも活気が生まれ、生産者のやりがいにもつながった。

しかし課題もあり、多くの中山間地域が直面する、高齢化問題、人手不足が米作りの足枷となっていた。ブランドが有名になり売上が伸びたとしても、産地のマンパワーが足りなければ、質のいい米作りはできない。そこで、藤本さんは米作りで一番大変な工程はなにか生産者さんと話し合い、出てきた課題が「田んぼの草刈り」だった。毎年夏に3回行っている「草刈り応援隊プロジェクト」の始まりである。藤本さんや若手生産者が中心となり「宇山ミーティング」を開催。「里山照らし隊(※)」と連携しながらプロジェクトの実現に向かって意見交換を行った。facebookなどのSNSでボランティアを募集し、集まった参加者は総勢50人。地域のために何かしたいと思っている若者を中心に参加を募り、思いを実現できるプロジェクトとして走り出した。また、応援隊の様子をSNSで発信することで、宇山の知名度向上と「うやま米」のファン獲得につなげた。参加者からは「また宇山に来たい」という声もあり、地域のために活動する喜びを体感してもらうことができた。生産者の負担は軽減し、販売者は米の売上アップにつながり、参加者は活動を通じて地域貢献ができ、全ての人にメリットがある“三方よし”のプロジェクトとなった。

本業の傍ら、「自分たちにできることから少しずつ」と生産地の課題解決に取り組み、成果を上げてきた。今後は、まだ眠っている産地の掘り起こしを行いながら、地域を盛り上げる活動を行っていく。

米屋の役割について、藤本さんは「生産者と消費者をつなぐ架け橋」という。手間ひまと愛情を込めて作られたお米たちを多くの人に知ってもらいたい。“No Rice , No Life”を胸に、島根の米を愛する藤本さんの挑戦は続く。

(F)

※「里山照らし隊」
雲南市吉田町民谷宇山地区の地元ボランティアでつくる、宇山地区を盛り上げるための任意団体。「田んぼアートイベント」「林業体験」「竹炭を利用した畜電器の製造」なども行い地域の活性化に寄与している。